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​首・肩・腕の代表的疾患

頸部椎間板ヘルニア

⒈頸椎椎間板ヘルニア

(1)頸椎椎間板ヘルニアとは?

頸部椎間板ヘルニアとは線維輪裂孔より髄核が突出あるいは脱出し、頸部神経根を圧迫することによって症状が出現したものをいいます。これを簡単に説明しますと、首の骨は全部で7個あり、骨と骨の間には柔らかいクッション(椎間板)があります。そのクッションの中には髄核といっていろいろな衝撃からクッションを守る働きをするものがあります。その髄核が長年の首の使いすぎや急な過剰の負荷(交通事故など)によりクッションから飛び出し、飛び出した髄核が周りの首の神経を圧迫することにより、首〜肩甲骨周囲〜腕にかけて痺れや痛み、感覚異常といったさまざまな症状を引き起こす疾患です。

40代から高齢者に多い疾患と言われており、ラグビーやアメリカンフットボールなどの首に負荷がかかるスポーツ選手にも多く見られます。

(2)症状

急性期では激しい頸肩部痛が主症状です。

主に首から肩甲骨周囲、腕にかけての痛み、痺れ、感覚異常などの症状が見られます。

症状はほとんどの場合で片側または両側にみられ、握力低下や字が書きにくい、衣服のボタンが閉められない、手先の痺れがひどいといった特徴的な症状があります。

重症になるにつれて膀胱直腸障害(頻尿・便秘・排尿排便失禁など)が出てくる場合もあります。

(3)病院での治療

基本的には保存療法になります。

頸椎カラーを使った患部安静、頸部牽引療法、鎮痛薬の投与やステロイド薬での消炎鎮痛治療となります。痛みや痺れなどがひどい場合は硬膜外ブロック・星状神経節ブロック・神経根ブロックなどの神経ブロック注射注射を考慮します。これらの治療法で症状が引かない場合、手術療法となります。術式には前方除去固定術と後方除去術のふたつが主に挙げられます。

(4)鍼灸での治療

鍼灸治療には痛みを抑えるエンドルフィンなどの脳内物質を分泌促進させる効果があることが分かっています。

そのため、厄介な痛みや痺れといった症状は鍼灸治療の得意分野となります。

患部の筋緊張を取り除き、血流を完全してあげることで症状が和らぎます。

五十肩

⒈五十肩(肩関節周囲炎)

(1)五十肩とは?

五十肩という病名はありません。50歳前後で発症することが多いため五十肩または四十肩と言われています。

原因ははっきりしないことが多く、肩関節を構成している筋肉、腱、靭帯、関節滑液包などが老どで弾力性を失い発症するといわれています。外国ではfrozen shoulder(凍った肩)といわれ、名前の通り肩が凍ったように動かなくなる疾患です。

(2)症状

徐々に発症して肩の痛みと運動制限が主に出てきます。痛みは寒い朝方や夜間に強くなる傾向があります。

症状の経過としては

①痙縮期(肩の自動運動が制限される時期)

②拘縮期(他動運動が制限される時期)

③回復期(疼痛、可動域が改善されてくる時期)の3つの病期があります。

典型的な運動制限としては結帯・結髪動作などがあります。

(3)病院での治療

基本的に保存療法(運動療法・温熱療法・生活療法など)となります。

急性期には炎症がまだ強いために運動療法は避けるべきですが、時間が経って拘縮が始まってくると適切な方法での運動療法が大変重要になってきます。保存療法で症状が治まらない場合、非ステロイド性抗炎症薬の投与やヒアルロン酸注射などの療法が考慮されます。

(4)鍼灸での治療

五十肩の東洋医学的鍼灸治療

五十肩の東洋医学的病態は主に肝の異常です。肝は筋肉をコントロールしており、肝の働きに支障が出ると筋肉の引きつりが起こり、肩の運動制限が発症します。肝の異常を改善し、筋肉の拘縮を取り除くことで症状は軽減します。

肩こり

3.肩こり

(1)肩こりとは?

肩こりとは肩周囲の筋肉(主に僧帽筋)が凝り固まったことによる重だるいような鈍痛感のことを言う。

最近ではパソコン作業が仕事の大半になっている業種も多いため、さらに肩こり持ちの人が多くなっている。

(2)症状

症状は主に首から肩にかけて筋肉の凝った感じ、重だるい感じ、不快感などがある。

症状がひどくなってくると、頭痛や吐き気などの症状を伴うこともある。

(3)病院での治療

治療は基本的に保存療法である。

運動療法(体操、ストレッチなど)や温熱療法などが行われる。

薬物療法では消炎鎮痛剤や神経ブロックを行うこともある。

(4)鍼灸での治療

肩こりの東洋医学的鍼灸治療

肩こりの東洋医学的な原因はたくさんありますが、特に「肝」「脾胃」「肺」「腎」などの異常があります。肩こりは肩だけを治療しても治りにくく、病態をしっかり把握して根本的な原因を治療することによって、症状を軽減し、再発を予防することができます。

(a)肝の異常による肩こり

このタイプは特に女性に多く見られます。婦人病や出産によって血を大量に消費するために血不足が起こり、慢性的な肩こりを発症します。また、過度な労働や精神的なストレスなどが引き金で起こる肩こりもこのタイプが多いです。

(b)脾胃の異常による肩こり

このタイプは暴飲暴食や胃腸などの内臓疾患が原因となって発症します。肝のタイプとは違い、筋肉は硬くなっておらず、肌肉が硬い感じの凝りとなります。便秘や胃腸症状が合併していることが多く見られます。

(c)肺の異常による肩こり

肺の東洋医学的な機能は「気」を体全身に送ることで、この機能に異常が出た場合に起こる肩こりがこのタイプです。筋肉の凝りよりも皮膚の緊張や異常感覚が見られ、悪寒、発熱、鼻閉、鼻水、頭痛といった症状が出る場合もあります。

(d)腎の異常による肩こり

このタイプは過度な労働や房事過度などから起こる肩こりです。高血圧、糖尿病、心臓病、甲状腺疾患などからくる場合もあります。

胸郭出口症候群

4.胸郭出口症候群

(1)胸郭出口症候群とは?

胸郭出口症候群とは上肢の絞扼性神経障害のひとつである。

主に3カ所の絞扼部位がある。

①斜角筋三角(全斜角筋と中斜角筋および第一肋骨でつくられる間隙)

②肋鎖間隙(第一肋骨と鎖骨でつくられる間隙)

③小胸筋下間隙(烏口突起下で小胸筋と胸壁間でつくられる間隙)

この主に3カ所で神経や血管が絞扼されることにより上肢に症状が出る。

(2)症状

腕の疼痛、痺れ、ダルさ、感覚異常、筋力低下、冷感などがある。

特に電車のつり革を持つような上肢の動きをした時に症状が発症することが多い。

(3)病院での治療

基本的に保存療法(生活指導・姿勢矯正・筋力訓練・温熱療法などの理学療法・薬物療法・神経ブロックなど)である。これらの療法で効果が得られない場合は手術療法を考慮する。術式としては第一肋骨切除術、斜角筋切除術、頸肋切除術などがある。

(4)鍼灸での治療

胸郭出口症候群の東洋医学的鍼灸治療

胸郭出口症候群は症状が主に上肢の疼痛、痺れのため、肝の異常が原因の病態が多く見られます。

そのため、肝の異常を改善し、気血の停滞を流してあげることで症状が軽減します。

​また、首にはたくさんの経絡(気血が流れる道)が通っているため、どの経絡に異常があるかを鑑別して治療を行うことが重要となります。

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