​代表的な難病疾患

鍼灸治療で難病を完治させることは難しく、病院での治療は不可欠です。

しかし、症状を和らげたり進行を遅らせたりすることも疾患や症状などによっては十分可能です。

現代の医学ではまだ原因を見つけることができていない疾患や治療方法が確立されていない疾患は数多く存在します。当院の東洋医学的鍼灸治療では、西洋医学とは全く異なった観点で診断・治療を行います。副作用がほとんどなく、自然治癒力を上げることを目的とした治療なため、病院での治療と併用して鍼灸治療を受けられることをお勧めします。

1.パーキンソン病

(1)パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは手足のふるえや体のこわばりを特徴とする神経変性疾患です。大脳基底核の黒質の変性によって運動をコントロールする機能が破綻することによって様々な症状が出現します。50~60歳にかけて発症することが多い疾患です。

 (2)症状

初発症状は手足の片側のふるえや、歩行時に足を引きずるといった症状が出現します。安静時のふるえが特徴的であり、動かすとふるえが減少したり消失したりします。動作の開始に時間がかかり、ゆっくりでしか動くことができません。また、顔に表情がなくなり(仮面様顔貌)、よだれを流す、汗を多くかく、便秘、抑うつ気分、不眠といったさまざまな症状が出現します。

(3)病院での治療

治療は基本的に薬物療法となります。L−ドーパなどの薬物を使い、欠乏したドーパミンを補充する療法となります。

 (4)鍼灸による治療

パーキンソン病、重症筋無力症、小脳変性失調症などの半身不随疾患は東洋医学的には中風病といわれ、主に3つのタイプがあります。中風病とは書いて字のごとく、風に中る(あたる)ことによって発症するものです。体に何かしらの異常があるときに風に当たることによって発症します。

①肝に異常があるもの

肝は血をコントロールしているものであり、これに異常があることによって気血津液の流れが悪くなり、麻痺、痺れ、動作緩慢といった症状が発症します。肝の異常を治し、血の流れを良くしてあげることによって症状の軽減が期待できます。

②腎に異常があるもの

腎は骨髄や脳をコントロールしており、これに異常があると骨髄や脳に異常が出て、半身不随や痴呆症などの疾患を発症します。腎の異常を治療することによって症状の軽減が期待できます。

③脾の異常によるもの

脾は気血津液といった生きる上で最も大切なものを作る役割があります。しかし、その機能に異常が出るとそれらのものが作られなくなり、さまざまな症状が発症します。また、脾は肌肉をコントロールしており、脾の異常があることによって肌肉が栄養されなくなり、いわゆる筋肉が弛緩して手足などを動かすことができないといった症状が発症します。脾の異常を治療することによって症状の軽減が期待できます。

 

2.関節リウマチ

(1)関節リウマチとは?

関節リウマチとは関節の膜に炎症が起こり、関節の軟骨や骨自体が壊れていってしまう疾患です。

原因は詳しくはまだ分かっていませんが、免疫の異常、遺伝、喫煙などに関係があると言われています。主に女性での発症が多く見られ、30〜50代での発症が多いと言われています。

(2)症状

初発症状は朝の関節のこわばりです。朝起きてすぐが指が曲げにくく、関節が腫れぼったい感じがあります。​特に指や手首での痛みが多く、指の付け根や第二関節で見られます。先端の第一関節で痛みや腫れが見られることはあまりありません。症状は右左両方に見られ、炎症が続くと関節が固まって動かしにくくなります。​アメリカのリウマチ学会で発表されている診断基準(1987年)では、以下の7つの項目のうち、4項目以上あてはまればリウマチと診断されることになっています。

①朝のこわばりが1時間以上続く

②3つ以上の関節がはれる

③手首や指の関節(指先から数えて2番目または3番目の関節)がはれる

④左右対称性に関節がはれる

⑤X線検査で手指にリウマチ変化がある

⑥リウマトイド結節(皮下結節)がある

⑦血液検査でリウマトイド因子がある

 (①~④の項目は6週間以上続くことが条件)

(3)病院での治療

治療は基本的に薬物療法となります。抗リウマチ薬、抗炎症薬、ステロイド薬などが用いられます。発症から早い段階で治療を始めることによって治療効果が出やすく、最近では新しい薬も開発されているため、早期発見がとても重要となります。

その他、運動療法や生活指導、場合によっては手術療法が用いられることもあります。

(4)鍼灸での治療

リウマチなどの関節痛は東洋医学では「痹証、湿証、痿証、水気病など」といいます。

痹証とは、体に外邪(風・寒・熱・湿など)が入ることによって発症する関節や筋の痛みや痺れです。

主なタイプは3つほどあります。

①脾胃の異常によるもの

脾胃に異常があると、体内に余分な水分が溜まりやすくなります。そこに湿邪が入ってくることによって体内の余分な水分が排出できなくなります。そこに様々な要因(暴飲暴食、過労など)が加わることによって湿が熱となり、関節痛が生じます。

②肝の異常によるもの

肝は血をコントロールしており、その肝に異常があると血の量が減少します。東洋医学ではこれを「血虚」といいます。過労や使いすぎ、ストレスなどは血を消耗するため血虚の状態が進み、そのために関節が疼くことがあります。

③腎の異常によるもの

腎の機能が低下してくると体内の水分が表に出てきます。中年以降に肥満傾向となるのは、歳をとると腎の機能が低下しやすく、それによって水分が表に出てくるからと言われています。この水分が停滞することによって関節痛を生じます。(水気病)

 

2.線維筋痛症​

(1)線維筋痛症とは?

線維筋痛症とは、身体の広範囲に起こる激しい慢性疼痛を主症状とする難治性の疾患です。

原因はまだ分かっておらず、30〜50代の働き盛りの女性に多く見られます。

さまざまな症状が混合して発症するため診断が困難であり、2009年に線維筋痛症学会が発足されてからここ最近でやっと臨床研究が進んできている疾患と言われています。

(2)症状

主症状は身体全身の激しい慢性疼痛(こわばり)です。

その他、全身の疲労感、頭重感、頭痛、ふるえ、痺れ、ドライアイ、ドライマウス、睡眠障害、うつ病、過敏性腸症候群、逆流性食道などさまざまな症状を合併します。

(3)病院での治療

症状によって治療方法は異なってきます。

全身の激しい疼痛が主症状の場合、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS)や抗リウマチ薬が投与されます。うつ病の合併が見られる場合、抗うつ薬、抗不安薬、抗けいれん薬などが投与されます。また、近年アメリカでは抗てんかん薬のプレガバリンが線維筋痛症の治療薬として認可されました。日本でも2012年に承認され、神経因性疼痛や末梢神経障害に対する治療薬として注目を集めています。しかし、多彩な副作用があることから、安易な投与はできないと考えられています。

(線維筋痛症診療ガイドライン2013 日本線維筋痛症学会編)

(4)鍼灸での治療

線維筋痛症は疼痛のみが発症する疾患ではなく、疼痛とともに様々な症状を併発します。

すべての症状は繋がっているというのが東洋医学的な考え方であり、それぞれのお身体の状態に応じて適切な診断と治療を行うことで症状の改善が期待できます。

疼痛の原因となるものを東洋医学的に一つ挙げるとするならば、肝の異常があります。

肝とは血をコントロールするというとても重要な働きをしています。その肝に異常があると血が体内に不十分な量しか蓄えられなかったり、血の流れが悪くなったりしてしまいます。専門用語ではこのような状態を「血虚」といいます。この血虚という状態になると、筋肉の痛みや痺れといった症状が発症してしまいます。また、肝は精神状態にも密接に関係しており、肝の異常がうつ病などにも繋がっていきます。このように、東洋医学ではすべてが繋がっており、体全体を把握して治療を行うことがとても重要となってくるのです。

 

3.ギランバレー症候群

(1)ギランバレー症候群とは?

ギランバレー症候群とは急性に進行する末梢神経障害です。原因は主に単核球浸潤と脱髄です。

(2)症状

症状は急性かつ対称性の手足の脱力と歩行困難などがあります。

重症の場合、呼吸筋の麻痺や球麻痺(延髄の運動核の障害による麻痺。咀嚼、嚥下、構音などの障害をきたす)をきたします。

(3)病院での治療

治療は基本的に高タンパク、高ビタミンの栄養管理となります。

呼吸筋の麻痺による肺炎や窒息の危険性が疑われる場合、人工呼吸管理を行います。

 

4.脊髄小脳変性症

(1)脊髄小脳変性症とは?

脊髄小脳変性症とは、原因不明の小脳や脊髄の萎縮を生じることによって起こる運動失調を主症状とする神経変性疾患です。全体の約40%が遺伝によるものと言われています。

(2)症状

症状は主に運動失調症状(立位・歩行時のふらつき、ろれつがまわらないなど)があります。

痙性対麻痺(足の突っ張り、歩きにくいなど)が特徴的な症状であり、脊髄小脳変性症では症状がゆっくりと進行していきます。

(3)病院での治療

治療は基本的に薬物療法となります。

主にTRH(thyrotropin-releasing hormone)製剤プロチレリン酒石酸塩(ヒルトニン®注射液)と、

TRH誘導体であるタルチレリン水和物(経口薬セレジスト®)が処方されます。

痙性麻痺には抗痙縮薬が処方されます。

また、集中的なリハビリテーションが症状の軽減や進行を遅らせることに有効であり、さまざまな

リハビリが行われています。

(4)鍼灸による治療

パーキンソン病の欄を参照してください。

 

5.多系統萎縮症

(1)他系統萎縮症とは①線条体黒質変性症②オリーブ橋小脳萎縮症③シャイ・ドレーガー症候群 の3つの疾患の総称です。

①線条体黒質変性症

線条体、特に被殻の変性などによりパーキンソン病に似た症状を発症する疾患です。

(症状)

パーキンソン様症状(動作が緩慢または減少、歩行時のふらつき、構音障害、排尿障害など)

が主に挙げられます。

(治療)

発症の初期ではパーキンソン病治療薬が有効であるが、進行していくうちに薬の効果が減少

していく。

②オリーブ橋小脳萎縮症

主に小脳と脳幹の萎縮が見られ、起立・歩行時のふらつきなどの小脳失調症状が主症状となる疾患です。

(症状)

起立・歩行時のふらつき、ろれつが回らない、手の細かい動きができないなどが主症状となります。

(治療)

治療法はまだ確立されていません。進行度次第では短期集中リハビリテーションがADLの向上を目的として行われることがあります。

③シャイ・ドレーガー症候群

起立性低血圧、排尿障害、発汗低下などの自律神経症状を初期症状とし、遅れて小脳症状やパーキンソン

状が加わってくる疾患です。

(症状)

初期症状は起立性低血圧、排尿障害(頻尿、夜間尿、残尿感、排尿困難、尿失禁、尿閉など)、発汗の低下、便秘などがあります。男性ではED(インポテンツ)をきたします。

経過と共に小脳症状やパーキンソン症状が出てきます。

(治療)

生活指導(起立性低血圧では急に起き上がらないなど)、薬物療法などの症状に対しての対症療法があります。

 

6.重症筋無力症

(1)重症筋無力症とは?

重症筋無力症とは、神経筋接合部のアセチルコリン受容体に対する抗体によって神経伝達障害を生じる自己免疫疾患です。約70パーセントの患者に胸腺異常が合併すると言われています。

(2)症状

主症状は骨格筋の筋力低下や疲れやすい(易疲労)があります。また、眼瞼下垂や複視といった眼症状が特徴的です。重症の患者では呼吸筋麻痺を引き起こすことも稀にあります。

(3)病院での治療

治療は軽症の場合はコリンエステラーゼ阻害薬が投与されます。

症状が軽減されない場合、免疫療法(経口ステロイド、カルシニューリン阻害薬など)が考慮されます。呼吸筋麻痺や嚥下障害がある場合、経口薬とともに血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法を併用することにより、筋無力症状の早期改善が期待できます。

また、胸腺異常を合併している場合は外科的手術が第一選択となります。

(4)鍼灸による治療

パーキンソン病の欄を参照してください。

 

7.多発性硬化症(MS)

(1)多発性硬化症とは?

多発性硬化症とは、中枢神経系の脱髄疾患です。神経の周りを覆う髄鞘が壊れることによって中にある神経が外に飛び出してくる(脱髄)ことにより様々な症状が発症します。髄鞘が壊れる原因は免疫系が自分自身を攻撃してしまう(自己免疫疾患)ことによって起こると言われていますが、なぜ自分自身を攻撃してしまうかなど詳しい原因はまだ分かっていません。

(2)症状

どこの神経で障害が起きるかによって発症する症状が違います。

視神経の障害によって視力低下や視野欠損が、小脳が障害されると歩行困難症状が、大脳が障害される手足の運動失調症状が発症します。

(3)病院での治療

急性期ではステロイド薬での治療となります。

急性期を過ぎると、薬物での対症療法に切り替わります。

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